日本人が知らない「お茶に潜む毒」の真実


今、世界中で空前の「日本茶ブーム」が起こっているのをご存知だろうか?

筆者が住むドイツ北東部の都市ベルリンもその一つ。高いものは「1gあたり約1200円(10ユーロ)」と高級品ながらもベルリンのカフェや店頭で「抹茶」を目にする機会が増えてきている。

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 ドイツで日本茶がウケる理由。それはなんて言っても「効能」だ。抗酸化力のある自然食品・スーパーフードとして認識され、アルコールやコーヒーに代わる嗜好品として嗜まれているのは、健康志向の強いドイツ人らしい傾向だろう。因みにこの国では、風邪をひいて医者にかかると、ハーブティーを処方されるほどお茶を健康のために飲む習慣がある。また、専用の道具を用いてお茶を点てる秩序だったプロセスは、ドイツ人にとっては魅力的であるに違い無い。

 しかし、日本茶の人気は日本人として嬉しい反面、残念な事実も存在する。それは日本で生産されたお茶のほとんどが、EUにおいて「残留農薬(食物に残った農薬)」の基準値を超えていたり、認可されていない農薬を使用しているため輸入ができないことである。

 そこで、今回Be inspired!は、ファッションカルチャーに強く、ギャラリー、カフェ等が集まるベルリン、Mitte地区に店を構える日本茶カフェ「Green Tea Café Mamecha(以下マメチャ)」店主の豆谷 秀敏さんに「日本人に知ってほしい日本茶にまつわる農薬の真実」を伺った。

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 「お茶のある生活を普及させるのが目標。儲からないとしてもおいしいお茶を提供しないと意味がない」という豆谷さんは、2010年にMamechaをベルリンで開店させた。オープン当時から茶葉を厳選して仕入れてきたそうだ。抹茶以外にも、茎茶、深蒸し茶、玄米茶、ほうじ茶、各種ラテ、など種類豊富に揃えている。

 「開店当初はほんの一部のマニア向けだったものが、だいぶ認知されてきた」と流行を実感している豆谷さん。しかし「日本から入荷できない茶葉がある、というより、ほとんどは入荷できないという感じ。だから輸入できるお茶を探すのは大変。EUの基準に合ったお茶を作ってるところなんて少ないし、EUでも作っていないし」と日本茶の実情を明かした。

バイオハザード!世界第3位の農薬使用大国「日本」

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(Photo by Andy Powell)

 悲しくも、世界第3位の農薬使用大国の日本。耕地1ヘクタールあたり農薬使用量(2010年)は12.1kg。アメリカの倍、ヨーロッパ諸国の3倍~10倍に及ぶ。因みに1位は中国で17.8kg/ha、2位は韓国で13.1kg/ha、ドイツの3.4kg/haと比べてもその差は明らかだ。(参照元:GREENPEACE

 見た目が美しい野菜や果物の方が売れる傾向にあるため、農家も農薬を使用せざるを得ず、スーパーマーケットには画一化された商品が並ぶ。それを口にする私たちへの影響、安全性はいかがなものだろうか。

 我が国は、有機農家のシェアも世界最低レベルで、全体のシェアのたったの0.2%程度。中国よりも少ないのが現状だ。有機農法は手間が掛かるゆえ、生産性を優先させるために農薬を使った結果、その土地や作物は農薬に頼らざるを得なくなるという負のループが待っている。

欧州で禁止の農薬がなぜか日本ではOK…

 
 神経の働きを阻害して昆虫を殺す「ネオニコチノイド系」の農薬。ネオニコチノイド系農薬が原因で、自然生態系の維持に欠かせない受粉を担うミツバチの大量死や、群れの消滅が世界中で問題となった。1994年にフランスでイミダクロプリドによる種子処理(種子のコーティング)が導入された後、ミツバチ大量死事件が発生。2000年以降、事態は深刻化。水溶性のために海や川の汚染、また生物多様性に影響を及ぼすことも問題視されている。

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Photo by Allan Hack

 そのような問題を受け、2013年にEUの欧州委員会は、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類を含むネオニコチノイド系農薬を当面使用禁止にすることを決定した。

 しかし、その流れを逆流するかのように日本では、厚労省がネオニコチノイド系の農薬の食品残留基準を大幅に緩和。例えば、ネオニコチノイド系農薬のひとつ「クロチアニジン」のホウレンソウの残留基準は13倍まで引き上げられたのだ。

男の生殖能力を減少させる農薬「ネオニコチノイド」

 ネオニコチノイド系の農薬は、昆虫だけではなく、人体にも悪影響をもたらす。

 例えば、スイス・ベルン大などの国際研究チームが2016年、「オスの生殖能力を減少させる」と発表。また、日本の脳神経科学者黒田洋一郎氏は、ネオニコチノイド系農薬は、子どもの脳の発達障害(自閉症、ADHD:注意欠陥多動性障害、LD:学習障害)の原因になるという説を唱えている。(参照元:The Scientist, 東京新聞, nature.com

 その効能が認知されているにも関わらず、表裏一体の事実。豆谷さんは「よその国の人も日本茶で健康になって欲しいんですけどね」と嘆く。

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 Mamechaも品質にこだわるドイツ人に向けてのアプローチとして、オーガニックの茶葉を輸入している。

“オーガニックの茶葉はまぁまぁありますが、大概不味い。お茶の葉は、農薬で守ってあげないと、自力で虫から身を守るために、おいしくない葉に育つんです。だからニッチな需要のEU向けにわざわざ栽培するお茶は(手間も掛かるので)安く作れない”

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 クオリティとお金のバランスは、どんなシーンにもつきまとうジレンマ。しかし、農薬を使う理由がおいしさや品質保持のためであるとしても、その代償は私たちの未来に大きく関わってくるはずだ。

 現在、日本政府は、農作物の輸出量を現在の2,000億円程度から1兆円へ引き上げようとしている。日本茶は重点品目のひとつで、2005年には21.1億円だった輸出額は、2014年には78億円を達成。2020年には150億円を見込んでいる。(参照元:東洋経済

 しかし、日本人に欠かせない茶葉は、国内だけで充足するに足る市場であることから、これまでの歴史において、誰も海外向けに生産を意図してこなかった。生産販売サイドだけで新興する海外のニーズに対応していくのは容易ではない。

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“海外向けの栽培は、余裕のある農家しかできない。結果を出す実験には何年も掛かる。推進する政府の戦略的なサポートがあったら良いんですが。もしくはEU側の基準が変わるかです”

 豆谷さんは、現状の問題と改善点について話してくれたが、最後に「要は、日本はまだ本気でオーガニックに着手してないんです」と悲しそうに言い放った。根本的な問題を見直し、抜本的にシステムを再構築することでしか「お茶の農薬問題」を打破できないのだ。

消費とは、商品の背景へ投資すること

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Photo by Keith Ivey

 日本茶ブームの裏で、明るみになる事実。他国に遅れを取る農薬や食の安全性、環境への配慮について、今一度考えてみてほしい。

 ドイツでは、商品の背景を考えて投資、購入する人が多い。街の至る所にオーガニックスーパーがあり、自然環境への配慮など、総じて人々の意識が高い。安全性と実務的なアイデアがマッチすれば、抹茶のように高くても価値があると認識される。オーガニックじゃないと売れないという潮流や、巨大化したマーケットには認証問題などの争点もあるのだが。

 日本のオーガニック市場も発展しているものの、まだまだ改善の余地がある。消費者として商品を手に取った時、背景について、少し想像力を働かせてアクションを起こしてほしい。その行動は、確実に「日本のお茶の未来」を変える一歩なのだから。

All photos by Makiko Tanaka unless otherwise stated.
Text by Makiko Tanaka
ーBe inspired!

 

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