「ニキビ、肌荒れ、そばかすを誇張」。本物よりもブサイクに描く似顔絵師が世界中で大人気の理由


誰にだってあるコンプレックス。それを思いっきり人に見せざるを得なくなったら、あなたはどうするだろうか?傷ついたり、イライラしたり、もしくは傷口に塩を塗られたような、この上なく辛い気持ちになるかもしれない。しかし、実際にそのコンプレックスを敢えて見せる人たちがいる。するとどうだろう。「辛さ」とは、また違った感情が生まれたようだ。

(Photo by Alex Berger)

(Photo by Alex Berger)

仕上がりはあえての「ブサイク」

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 路上やショッピングモールなどでよく見かける、その場で似顔絵を描いてくれるサービス。それぞれの絵師によって違いはあるものの、たいていは見かけよりよく書いてくれるもの。しかし今、世界中で大人気の似顔絵師たちは真逆なことをしているというのだ。

 『sketchyCrab』という名前で活動している似顔絵師グループだ。Facebookを通して彼らに写真を送ると、それをもとにあなたの似顔絵を描いてくれるという形をとっているのだが、その出来上がりを見るととにかく「酷い」の一言だ。“人気”と言われている似顔絵師にも関わらず、お客さまを美人やかっこよく描くどころか、あえて「ブサイク」な部分を強調して描いているのだ。

 例えば、頭に言われなければ分からない程度のニキビがある人に対しては、そのニキビを強調した似顔絵を描き、そばかすが気になる女性にはそのそばかすをより強調した絵を描いている。そして極め付けは、肌荒れがひどい女性に対し、なんと薬用クリーム「クレアラシル」を“飲ませている”絵まである。なんて失礼な似顔絵師たち…と思いきや、なぜか描かれた人たちはとても満足気。




 この、「あえて誰も触れなかった部分に触れられること」に皆、快感を覚えているようである。この似顔絵の話題はあっという間に世間に広がり、今や世界中から注文が殺到しているとのことだ。

「傷」を見せて、「傷」を癒す

 またロンドンでは、同じように辛い姿を見せることをあえてしている人たちがいる。ロンドンの中でも巨大なビルが立ち並ぶ中心エリアの人通りの多い交差点。その交差点には大きな電子看板があるのだが、そこに突然映されたのは、顏や体が痣だらけの見るに堪えない女性たちの姿。

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 実はこれ、ドメスティックバイオレンスに関心を持ってもらうために仕掛けられた啓蒙広告。現在、自覚なしにDV を受けている人の目を醒まさせ、危機感を持たせることはもちろん、被害者たちもあえて「見られる」ことで、傷を癒すことができるという考えのもと行われた。ドメスティックバイオレンスに悩む人の多くは、それを誰かに相談することを躊躇してしまう。そのため、身体的そして精神的傷が積み重なっていく。助けを呼ぶこともできない。

 ポスターの女性たちのようにドメスティックバイオレンスを受けてしまった後に自分の傷をあえて人々に見せることが今の自分と真摯に向きあう機会を与える。そしてそのプロセスは今まで見て見ぬ振りをしようとしていた本当の自分を受け入れることに繋がり、心が軽くなるのだ。自分が何を望んでいるのかを自覚し、それを責めることなく受け入れることでもあるので、傷を癒す効果があるという。

“強がりはコンプレックスの裏返し。「強く見せる」努力はやめて、「強くなる」努力をすることだ”

 これは、オーストラリアの心理学者、アルフレッド・アドラーの言葉だ。(参照元:メンターナビ)これは要するに、コンプレックスを隠して強く見せるのではなく、あえてそのコンプレックスを見せて強くなっていこうというものである。「自分は○○だから」というコンプレックスを盾にした言葉は時に言い訳となってしまう。

 しかし、それを見せることによって、コンプレックスを言い訳にすることができず、コンプレックス一つで自分自身は変わらないという意思を示すこととなり得る。人には見せたくない部分を見せることは勇気がいる。しかし、それをさらけ出すことは自分を拒絶していないというポジティブな思考にも繋がる。すると、根本的に弱さを強さに変えることができるというのだ。

「コンプレックス」の先にあるもの

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 自分に自信がない人は、ありのままの自分の姿では周囲に受け入れてもらえないのではないかと思い、それを隠し、無意識に過剰反応をしてしまう。しかし、「弱さを見せない=強い人」ではなく、弱さを見せることができる人ほど強い人なのかもしれない。自分の弱さを見せることができる人は、周りの評価を恐れていない。自分を持ち、自分で自分をきちんと評価ができるということである。お客さんの顏を「ブサイク」に描く似顔絵師たちのように、もし、あなたのコンプレックスを指摘するような人が現れたら、それはまさにコンプレックスを克服するチャンスを手にした瞬間かもしれない。

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Text by Asuka Yoshida
ーBe inspired!

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