「いつになったらペニスはなくなるの」。6歳の少女の嘆きと葛藤

2017.1.23

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その昔、生まれてくる子供の性別はその子がまさに生まれる瞬間までのお楽しみだった。しかし技術の進歩により今では生まれる何週間も前からペニスの有無でその子の性別を知ることができるようになった。しかしいくら医療の技術が発達しようとも、生まれてくる子の「心の性別」はその子にしかわからない。社会に決められた「男女」という型にはめられないトランスジェンダー、性同一性障害についてあなたはどれくらい知っているだろうか?

「トランスジェンダー=性同一性障害」ではない

近年テレビやネットでも目にする機会が増えた「トランスジェンダー」「性同一性障害」という言葉。この2つの表現はしばしば「使う場所で分けられる同じ意味の言葉」として考えられがちだが、実はそれには少し語弊がある。一般的に性同一性障害とは心と体の性の違いに違和感を持ち、性別適合手術を望む場合が多いと言われているのに対しトランスジェンダーの中には生まれたままの体で生きていきたいという人もいる。トランスジェンダーの中に性同一性障害も含まれるということだ。

また、トランスジェンダーという言葉には「性同一障害」という医学的な用語とは異なり、「個性」や「特徴」というニュアンスも含まれる。(参照元:THE HUFFINGTON POST) そもそも与えられた体が社会的に期待される性別と一致していないからといい「障害」と呼ぶこと自体が権力による抑圧だという意見もある。(参照元:THE HUFFINGTON POST)個人によって、その受け取り方は変わってくる。

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Photo by Steve Jurvetson

モデル、ジーナ・ロセロ。自信に満ちた笑顔が美しい彼女だが、生まれた時の性別は「男性」。ありのままの彼女を受け入れてくれる家族の元で育ったジーナは、2001年、19歳の時にタイで性別適合手術を受け、母の暮らすアメリカに渡りジーナという名前と性別の欄に「F(女性)」と書かれた運転免許書を取得し、正真正銘の「女性」となったのだ。5歳の時にはすでに自分は女の子だと主張していた彼女は、15歳になる頃から数々の美人コンテストに出場し、幼い頃より憧れていたファッションモデルになる夢を叶えた。彼女の場合は「性同一性障害」を乗り越えたトランスジェンダーだと言えるだろう。(参照元:『ジーナ・ロセロ:私がカミングアウトするべき理由』

公共トイレという壁

性同一性障害を含むトランスジェンダーの人々が直面する大きな問題の1つに公共トイレの利用がある。近年日本では、車椅子などが入れるような「多目的トイレ」を目にすることも増えたが、学校や幼稚園などの教育施設ではどうだろう。ほとんどが「男女」の2択ではないだろうか。
 
アメリカ、コロラド州に住むトランスジェンダーの小学生Coy(コイ)の権利を巡る訴訟を追ったドキュメンタリー映画『私たちの娘、コイ(原題:Growing up, coy)』。

男の子の体に女の子の心を持つ彼女は学校側から許可を受け「女の子」として学校生活を送っていたが、突如学校から「女子トイレ」の使用を禁止された。学校から他の生徒と同じトイレを使うことを禁止されたその「女の子」は職員用もしくは保健室の男女兼用トイレの使用を余儀なくされたのだ。日本を含め、メディアで取り上げられるトランスジェンダーはほとんどが自分で声を上げることができるようになった大人である。しかしこの映画では若干6歳のコイの「彼(he)と呼ばないでほしい」「いつになったらペニスはなくなるの」といった幼い心にのしかかる葛藤が映されており、視聴者の心により深く真っ直ぐ突き刺さる。(NETFLIX:https://www.netflix.com/title/80128657

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Photo by Photo by Growing Up, Coy

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Photo by Photo by Growing Up, Coy

また、トランスジェンダーである作家、アイバン・カヨーティもトランスジェンダーが抱える公共トイレの問題について、幼稚園でトイレに行けなかった子供の事例を挙げて話している。(参照元:『アイバン・カヨーティ:性別無しのトイレが必要な理由』)私たちが当たり前のように使っている「男女」2択で分けられたトイレだが、自分の心に正直に生きようとする子供たちにとっては、自分が社会では受け入れられない存在だという残酷な現実を突きつけられ、自分自身の問題として心に傷を負うきっかけとなってしまうのだ。

「願う自分」を選ぶ

私たちの誰もが迎える思春期もトランスジェンダーの人々には大きな問題としてのしかかる。10代のトランスジェンダー達にとって思春期は悪夢の時になり得ると話すのは内分泌科医のノーマン・スパック氏。彼らのほとんどが思春期の頃には自分がトランスジェンダーだという意識があり、性同一性障害の人となると「間違った体で生まれた」という確信を持っているという。しかし、自分の気持ちとは無関係に望まない体へとどんどん成長してしまうこの思春期。それは彼らにとってまさに悪夢なのだ。その悪夢から彼らを救うための治療法の1つとして「ホルモン補充療法」がある。

「12・16・18」と呼ばれるこのプログラムでは、12歳頃に遮断ホルモンによって体の成長を止め、16歳で身体的、心理的な再検査をし再び治療の必要性を検討する。そして18歳で性別適合手術を受けるのに相応しいか判断されるのだ。遮断ホルモンは投与を止めれば元の成長が始まるため、16歳の再検査の時点で手術を望むかそのままの体を望むかを選択できる。そう、この「12・16・18」プログラムはトランスジェンダーの彼らに「願う自分」を選択するための時間を与える治療法なのだ。(参照元:『ノーマン・スパック:トランスジェンダーの10代が願う自分になる手助けをする私の方法』

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Photo by Valeria Boltneva

テレビ番組やネットニュースというフィルターを通す彼らの姿は果たしてどこまで真実なのだろうか。彼ら自身の声にほんの少し耳を傾けてみてほしい。空気を読み合い、本当の自分をさらけ出すことに臆病になっている人も多いこの世の中で、「男女」という枠を超え、逆境に立ち向かい、本当の自分として真っ直ぐ生きることを選択する彼らの姿は私達が生きる上で最も大切な「自分を信じて進む」という姿勢を思い出させてくれる。お互いがお互いの個性を尊重できる、LGBTのプライドを象徴する虹色のように七人七色ジェンダー時代が来る日もそう遠くはないだろう。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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