難民にならざるを得なかった人々のリアルとは。“観なかったことにできない映画祭”が今秋、日本で無料公開


日本に住んでいると、世界に多く存在する「難民」について考えることは少ないかもしれない。しかし、だからといって問題を知らなかったことにしていいのだろうか。

そんな難民問題について知る良い機会になるのが、来月末から東京をはじめとする日本各地で開かれる、難民を題材にした映画のみを上映する映画祭だ。12回目を迎える今年のテーマは、「観なかったことにできない映画祭」。これはまさに日本国内の難民問題への関心の低さに対する危機感からつけられたものだと考えられる。

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 9月30日から開催される「国連UNHCR 難民映画祭2017」で上映される作品には、フィクションもあればスマートフォンで撮影した最前線のものまでさまざま。どれも難民が置かれた過酷な状況や行き場のない怒り、絶望、そしてそのなかで見出す希望などが描かれており、注目すべき作品ばかりだ。ここでは、そのいくつかをピックアップして紹介する。

『シリアに生まれて』

Photo by ©2016 Contramedia Films / La Claqueta PC
©2016 Contramedia Films / La Claqueta PC

 まず初めに紹介したいのは、シリアからトルコを経由してヨーロッパに渡ったり、爆弾に当たりトルコの病院で治療を受けたりしている難民として逃げてきた子どもたち数人に焦点を当てたドキュメンタリー。カメラは彼らがボートやバスで渡るところ、難民キャンプや途中の駅で足止めされているところ、難民申請を待つところや住むところを探すところを追いながら、どんなわけで家族と離れてヨーロッパへ向かい、何を想っているのかを聞く。国の情勢に翻弄された彼らはどうなっていくのだろうか。

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神は眠るが、我は歌う

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©Amin Khelghat

 次に紹介したい作品は、イランでの女性に対する弾圧や人権侵害をラップやロックで批判し、死刑を言い渡されたミュージシャンについてのドキュメンタリー。彼は難民としてドイツへ渡り、暗殺される恐怖と闘いながらも音楽活動を続けていた。そしてヨーロッパに押し寄せる他の難民たちに対し、何かできないか模索した彼はその後どんな運命を辿るのだろうか。

 

希望のかなた

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©SPUTNIK OY, 2017

 3つ目に紹介したいのは、ドストエフスキーの『罪と罰』を映画化したことで有名なフィンランドの鬼才アキ・カウリスマキ監督の日本初上映作品だ。彼の“難民三部作”の1つである同作は、難民に認定されず強制送還を命じられた男性がレストランで働くことになり、そこで出会う人々と交流するストーリー。弱者への温かい眼差しを独特なユーモアセンスで表現することで有名なカウリスマキは、どのようにして難民問題を描くのだろうか。

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私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~

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 最後に紹介したい作品は、暴力や性搾取でアフリカからオーストラリアに逃れてきた女性たちのドキュメンタリー。避難した先で安定した生活を手に入れても、祖国で受けたことのトラウマは消えなかったという彼女たちは、その辛い経験や感情を表現しようと舞台を作る。見る人に力強さと感動を届けたという本番ではどんなパフォーマンスを見せたのだろうか。

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 さて、映画のラインナップを見ると「難民」と一口に言ってもさまざまな理由でそうなった人がいるようだ。では難民とはどのような状況にある人をいうのだろうか?UNHCRによると、「紛争や宗教・国籍・政治的な意見が違うことによる迫害などが原因で、祖国にいては生命の安全を脅かされるため、やむを得ず他の国に避難しなければならなかった人のこと」(引用元:国連UNHCR協会)を指す。

 つまり、彼らは私たちと同じ一般の市民だが、住んでいた場所で起こった戦争や迫害のせいで逃げなければならなくなってしまったのである。そしてそんな人々の数は世界で約6560万人にのぼる。(2016年に紛争や迫害を逃れ、家を追われた人の人数、参照元:国連UNHCR協会②

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アフター・スプリング ~ザータリ難民キャンプの春~

 では日本に住む私たちには、難民に対して何ができるだろうか?まずはニュースや今回の映画祭で上映する映画などで、難民の現実を理解すること。それからUNHCRのように、難民の支援を行なっている専門機関の活動を支援することも問題の解決へ近づけることができるのだ。

 これには募金のほか、先日Be inspired!でも紹介した#難民とともにのハッシュタグをSNSでの投稿に使うことも問題の啓発につながって役立つという。

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ウェルカム トゥ ジャーマニー(仮)
©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH

 難民問題の現実を知りたくても、具体的にどうしたらいいのかわからない人も多いかもしれない。映画を通じてなら、それを視覚的に疑似体験することができ、自分を同じ状況に置き換えて考えてみることもできるだろう。

 しかも、映画祭では無料で作品を見られるということだから、たとえ難民について何も知らなくても自分の知らない世界を覗いてみるつもりで参加してみてはいかがだろうか。

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国連UNHCR 難民映画祭2017

 

<スケジュール>

東京:2017年9月30日(土)、10月1日(日)@スパイラルホール

10月2日(月)〜6日(金)@渋谷ユーロライブ

10月7日(土)〜9日(月・祝)@イタリア文化会館

札幌:10月14日(土)、15日(日)@札幌プラザ 2.5

名古屋:10月21日(土)、22日(日)@イオンシネマ大高

大阪:10月28日(土)、29日(日)@大阪ナレッジシアター

10月28日(土)、29日(日)@朝日生命ホール

福岡:11月4日(土)、5日(日)@レソラNTT夢天神ホール

広島:11月11日(土)@広島平和記念資料館「メモリアルホール」

11月12日(日)@広島国際会議場「ヒマワリ」

※入場は無料ですが、ウェブサイトからの事前申し込み(8月1日〜)が必要です。事前申し込みはこちら

 

<主催>

国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会

 

<パートナー>

独立行政法人 国際協力機構(JICA)

 

Facebook:国連UNHCR難民映画祭2017

Twitter:国連UNHCR難民映画祭

Instagram:@unhcr_rff

Text by Shiori Kirigaya
ーBe inspired!

 

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