「僕らはインターネットを使って先祖返りしてる」。タブーなしの“新しい会話” [Neutalk vol.2]


媒体名の変更やウェブサイトのリニューアルを控えたBe inspired!が送るシリーズイベント「Neutalk(ニュートーク)」。業種、年齢、性別、人種といったバックグラウンドとなるすべての壁を取っ払い、いままで交わらなかった人を招き、そこで生まれる「新しい会話(ニュートーク)」をしようという試みだ。

その第2回目が7月1日、「世田谷ものづくり学校」で行われた。トークテーマは、「いま話したい、本とインターネットのこと」。

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柳下恭平さん(左)木村昌史さん(右)

ゲストは、校正・校閲の専門会社「鷗来堂(おうらいどう)」と、同社が運営する“新しい本との出会い”をデザインする「かもめブックス」を取りまとめる柳下恭平(やなした きょうへい)さんと、先日“第36回 毎日ファッション大賞”の大賞候補にノミネートされた、「インターネット時代のワークウェア」を作るブランド「ALL YOURS(オールユアーズ)」代表の木村昌史(きむら まさし)さん。

当日開催されていたオールユアーズの3周年記念イベント、「LIFE SPEC CO-OP」に出店していたブランドを目当てに多くの人が集まり、初夏の快晴とあわせて熱気に沸いた世田谷ものづくり学校」。その一角で行われた「Neutalk」には、約50名が来場し満員御礼。

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今回は、もともと親交のあったゲスト2人がカジュアルな雰囲気で話す機知に富んだクロストーク(柳下さんいわく“これ全編結論の出ないただの居酒屋トークだから”)をお伝えする。

「本じゃフェスができない」。本とインターネットというメディアの違い

僕ね、トークイベントは無料でやるのがいいと思うんですよね。

 トークの序盤、ゲスト2人が自己紹介をしている合間に木村さんが言ったこの言葉に、「ほう、なんでなんで?」と切り返す柳下さん。この問いに木村さんは、「ギブアンドテイクが起こるから」と言い、続けてこう話した。

「無料で開催するので宣伝してください!」って主催者側がお願いできるのよ。だから僕がトークイベントに出るときは無料にします。で、「ガンガン写真撮ってハッシュタグをつけてSNSでシェアして」ってお願いする。だから皆さん、今日もガンガンやっちゃってください!

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 この呼びかけに来場者の皆さん、さっとスマホを取り出してパシャパシャと、束の間の撮影会がスタート。撮られながら柳下さんは、「いやあ、キム兄(木村さんの愛称)はインターネット的だねえ、さすがだ」と感心した様子。その心を司会が聞いてみたところ、このような答えが返ってきた。

本って情報とか知識をパッケージして、ずっと残していくことが一番の美学だと僕は思うんですね。本をビリビリって破ってシェアすることはないんです。だから今の「写真撮ってシェアして」ってキム兄の言葉がショックで、すごくインターネット的だなあと。本は一人で静かに読むものだからね。本じゃ“フェス”ができないんだ。

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 柳下さんの「本じゃ“フェス”ができない」を聞いて思い出したのが、この日の前日に行われた第1回目の「Neutalk」で、ゲストのHIGH(er) magazine編集長のharu.さんが言った「インディペンデントマガジンって呼ばれるメディアのいいところは、自分たちの意見が散乱しないこと。場がウェブじゃないから、文言を切り貼りされて、本来の意図とは違う解釈で意見が拡散されない」という言葉だった。

 柳下さんが言うフェス=“SNS上のお祭り”は毎日のように行われている。それがタイムラインを支配する日も珍しくない。

 これが『天空の城ラピュタ』の「バルス!」を音頭にした盆踊り的なお祭りであれば気楽に眺めていられるものの(Twitterを運営している方々は別にして)、目も当てられないような“炎上祭り”になるとそうもいかない。

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 本やインターネットのほか、メディアの性質によって、情報の読み方・受け取り方に違いが出てくることは、メディアや広報に関わる人はもちろん、そうでない人も意識しておいたほうがいいだろう。

 このあたりの違いをしっかり把握することができれば、木村さんがこの日言ったように、「第二のオールユアーズが作れるかも」しれない。

第二の「ALL YOURS」はこうつくれ! キーワードは“原始的”?

 ゲスト二人の長い自己紹介が終わったあと、最初のトークテーマ、「インターネットとは」に話が移っていく。ここで生き生きと話し出したのが木村さん。「インターネットは先祖返りなんだよね」の一言から、話題がどんどん膨らんでいった。

木村:ようは昔々、近所の人に「僕らが作った野菜どうですか?」と言って物々交換してた時代と同じことを僕はしてるんですよ。クラウドファンディングで「僕らが作った服どうですか?」とやってるだけ。それが世界中に向けて声をかけていることと、物々交換でなく金銭で服を交換しているという違いがあるだけで、他は大差ないんです。

柳下:これはどっちも“問屋”がいない世界だね。昔々は技術的な制約があって問屋という仕事が成り立たなかったから、原始的な物々交換で世界が成り立っていた。で、その後物流網が発達して問屋という仕事が生まれたけど、いまは物流網が発達しすぎて空間的な制約が限りなく薄まったから、結果的に問屋の必要性が低くなってきてる。ようはものづくりをしている人が直接ものを届けられるようになったわけだ。

木村:そう。原点回帰してる。だから「この人から買いたい」とか「友達だから買いたい」という理由でモノを買いたいって感情があるじゃないですか。そういうところで商売が成り立つんですよね、今は。

柳下:ブランディングも個人でできるようになったからね。

木村:そうそうそうそう。

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 ここで司会が合いの手を入れて、シェアリングエコノミーの話へと話題を広げる。

司会:じゃあシェアリングエコノミーもそういう原点回帰な面がある?

木村:そうだね、隣の家の人に「醤油かして!」っていうのと同じ感覚。

柳下:シェアリングエコノミーの前にDIYの精神がある気がする。「いるものは自分で作ろう」という流れがあって、その上でシェアの流れがきてるんじゃない?

木村:そうかもね。たとえば広大な庭があって、草を刈らないといけないと。そのときの選択肢は、“お金で解決する”というすごく現代的なものが一つ。二つ目に“自分でやる”というDIY的な方法がある。そして最後に、“誰かに助けてと頼む”シェアリングエコノミーがある。シェアリングエコノミーの何がいいかっていうと、お金を使わないことと、ものを持たないこと。しかも使用頻度が低いけど、みんなが使いたいものをシェアリングできる。

柳下:インターネットはなんでもつなげちゃうんだね。

木村:そう、つなげちゃう。だからさっき言ったように、「これどうですか?」という営業も世界中に“飛ばせる”ようになった。

柳下:逆に「Uber Eats(ウーバーイーツ)」*1みたいな小さな流通網もインターネットとの親和性が高いし、そこに新しいネットワークが作られはじめているのが今。

司会:「honestbee(オネストビー)」*2みたいなものも。

柳下:そうそうそう。これは業種を問わずやるべきなんですよね。出版業界には返品率という問題があるんだけど、すでに巨大な物流網が完成しているから改善しづらい。だから、すでに完成している巨大な物流網の隙間を補完する、小さな流通網を作ることができればいいなあと。

(*1)アメリカのUber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)社が運営する宅配サービス。個人が配達員に登録し配送を担当する。
(*2)シンガポールのhonestbee(オネストビー)社が運営する宅配・買い物代行サービス。個人が食品の配達員または買い物の代行を担当する。

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木村:話は変わりますが、IT系の仕事をしている方は今日いらしてますか?(会場を見渡す) あんまいないな。僕はインターネットって“器”に例えられると思っているんです。この話は糸井重里さんの「インターネット的」という本に詳しいんですが。あ、この本を読めばオールユアーズが作れます、参考にしてみてください。

 木村さんが言う“器”は「ハードウェアやプラットホームとか、サービスの基盤になるもので、料理がソフトウェアやサービスのアイデア」である。その前提を共有した上で木村さんは続けた。

木村:で、器の話ですが、IT系の人ってみんな器という名の“ハード”を作りたがるんですよね。大きくて綺麗な器を。でも、そのなかに盛るおいしい料理、ようは“ソフト”を作ろうとする人があまりいない。みんな器よりおいしい料理が食べたいのに。

柳下:ふむ。でも料理人がいくらおいしい料理を作っても、ハードを作る側の都合でなんでもひっくり返ってしまわない?

木村:まあそれもあるとは思うんですけど、逆に料理人が「このプラットホーム嫌だ」と言って使わなかったり見限るってこともある。

柳下:なるほどなるほど。よし、ここいらでやめとこう。おもしろいけど今してるこの話、飲み屋で2人で話すやつだからね。

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 というわけで、突如ものすごい勢いで始まった居酒屋トークのダイジェスト版(本当はこの3倍ぐらい話していた)、いかがだろうか。

 90年代に台頭し、ローカルなネットワークを世界規模へ一気に広げたインターネットだが、それを使って人が行う商いは今も昔も大して違わないという話、拡張革命を起こしたインターネットの縮小視点の話、器と料理の話。

 偶然隣席して聞き耳を立てないと聞けない概念的な居酒屋トークだが、発想の糸口になるようなヒントはそこここに落ちていたと思う。

読むたびに解釈が変わるのがいい本? 本とあなたの共感値を探ろう

 居酒屋トークを終えて次のトークテーマに上がったのは、「ゲスト二人が考えるいい本の定義」。まずは長く出版業界に従事し、本のことを知り尽くした柳下さんから話し始める。

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柳下:読むたびに解釈が変わる本がいい本だと思いますね。解釈の幅が深い本は、それが小説であれ実用書であれ、その時々に応じて感想が変わります。そしてそういう本を探すには、まず自分と同じカテゴリーの作家が書いているものを探してみましょう。

同じ性別の作家、あるいは同世代の作家の方が、より感情移入できる物語を書いている可能性が高い。もちろんそうでないパターンもたくさんあります。そういう前置きをしたうえで、自分と作家の共感値が近い本を探してみると、その人にとってのいい本が見つかりやすいかもしれませんね。

 続いて木村さん。「読むたびに解釈が変わる本は俺もいい本だと思います。すごくわかる」と柳下さんへの共感を示しつつ、「答えが書いていない本がいい本ですね」と明言。続けてその理由をこう話した。

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木村:今のビジネス本って“答えっぽいもの”が書いてあるだけで、結局それを真似したところで何もできないんです、再現性がないから。だから自頭で考えられる力をつけるという意味で、答えが書いていない本がいい本なんじゃないかな。

 両者共にいい本の定義を「読むたびに解釈が変わる本」としていたのは興味深いところ。年齢が経過してもなお読み応えのある、一生付き合える本との出会い。あなたにはもう訪れているだろうか。

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 トークはこのパートで終了。本稿では濃すぎる1時間半を凝縮してお送りした。

 ちなみにお二人には段上で好きな本をそれぞれ挙げていただいたので、ここに記しておく(お二人とも“好き”の幅が広い…!)。

柳下さん:
ミヒャエル・エンデ(2001).鏡のなかの鏡ー迷宮 岩波書店
伊藤計劃(2010).虐殺器官 早川書房

木村さん:
糸井重里(2001).インターネット的 PHP研究所
遠藤周作(1983).死海のほとり 新潮社

さて、次回の「Neutalk」は?

 6月と7月に連続して行われた、ゲストがジャンルの垣根を越えて“新しい会話”を生むトークイベントシリーズ「Neutalk」。次回は8月中の開催を予定。 Be inspired!のFacebookページで随時情報を更新しているためチェックしてほしい。

 はてさてそんなわけで、次回もお楽しみに!

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 ご来場者の皆さま、トークゲストの皆さま、世田谷ものづくり学校の皆さま、当日はありがとうございました!イベントに参加してくださった方にも参加できなかった方にも、ご要望やBe inspired!に対する印象についてぜひ教えていただきたいので、この下にアンケートをつけています。ご協力をお願いします!

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服を選ぶとき、何を基準に選んでいますか。
天候や環境を考えて服を選ぼうとすると、着られる服が制限されてしまう。
そんな経験ありませんか。
そこで、私たちDEEPER’S WEARは考えました。
服本来のあるべき姿とは、時代・ライフスタイル・天候・年齢・地理など、
人ぞれぞれの環境や日常に順応することではないだろうかと。
あなたの持っている服は、どれくらいあなたに順応していますか。
服にしばられず、服を着ることを自由にする。
人を服から“解放”し、服を人へ“開放”する。
このDEEPER‘S WEARの理念を可能にするのが、
日常生活(LIFE)で服に求められる機能(SPEC)を追求した日常着(WEAR)、
「LIFE-SPEC WEAR」なのです。
DEEPER’S WEARはALL YOURSが取り扱うブランドです。

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Text by Yuuki Honda

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