日本中に心を満たす生産と消費を。国内生産率3%のデニムに、誰もが愛着が持てる社会を作る25歳の起業家


 

Be inspired!をご覧のみなさん、こんにちは。山脇 耀平(やまわき ようへい、25歳)と申します。

Photo by 撮影者

普段は、2歳下の実の弟と一緒に「EVERY DENIM」というデニムブランドを運営しています。店舗は持たずに2年間、全国各地で販売会を開催してきました。

僕らは今年の春からキャンピングカーに乗って全国を回ります。これまでに出会った素敵な人たちともう一度会うため、これから出会う人たちと素敵な関係を築くため、僕らは出発します。本連載では、旅の途中で出会った熱い想いで今を生きる素晴らしい人たちを紹介できればと思っています。

おそらく色んな職業の方が登場するでしょう。でもみんな、僕らと生きる上・仕事をする上で近い価値観を共有している人たちです。どうか末長くお付き合いください。

じゃあ一体僕らが大切にしている価値観ってなんなのでしょう。まずはそんなところからお話の始まり始まり。

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デニム職人に出会って変わった、人に嫌われないように生きてきた“浅い”自分

 幼少頃は、ただとにかく目立ちたがり屋だった。クラスではいつも注目を集めていたかった。自分が話題を作り、輪を作り、その中心に居なければ気が済まないタイプだった。みんなに見てほしかった、みんなに好かれたかった。小中学生時代は、そんな感じであっという間に過ぎ去った。

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幼少期の島田 舜介(弟)と山脇 耀平(兄)

 高校に入り、目立ちたがりは収まった。ただ相変わらず、人に嫌われたくない思いは強かった。誰にも嫌われたくなかった。だからみんなに良い顔をした。人が嫌がる話はしなかった。人の嫌な部分に触れようとしなかった。そしていつか、浅く広い関係を築くのが誰よりも得意になっていた。

 嫌われない代わりに本音でぶつかってもこない。常に「楽しいこと」「表面的なこと」だけで人と繋がっている奴。いわゆる“浅い奴”。それはまさに当時の僕のことだった。喧嘩なんて、白黒つけるなんて考えられない。ただその場しのぎで、場当たり的な楽しさをいつも求めている人間だった。

 とにかく社交的な人間だったと思う。決して人見知りではなかった。ただ、人の心に、正面から向き合うのが、本当に苦手だった。クラスの友人にも、部活の仲間にも、大切な家族・恋人にも、ずっとずっとずっと、はぐらかしながらこれまで生きてきた。

 大学に入ってしばらくしても、そんな感じだった。みんな仲良くしてくれた。サークル・スノボ・鍋パ、なんでも楽しかった。今振り返っても楽しかった、後悔はしていない。でもついに、そんな日々にも飽きてしまった。というより怖くなった。20年間深く考えずに生きてきたこと。自分が素直でなさすぎること。本当は自分の価値なんて何もないんじゃないかということ。

 誰かの役に立ちたかった。真剣に打ち込めるものが欲しかった。そんな時に、僕はデニムの職人さんと出会うことになる。

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国内生産率は3%。デニム業界の現状を知ってみえた「やるべきこと」

 当時仲の良い弟が、大学進学を機に岡山に住んでいた。岡山といえばデニム工場がたくさんある街。デニムは好きで小さい頃からよく履いていたが、それくらいの認識しかなかった。そんな岡山のデニム工場を、縁あって見学させてもらえる機会があった。そこで見た、職人さんの姿にとにかく心を打たれた。

 僕が見たのは、ジーンズを加工する現場。1本1本手作業で、細かいところまで手を抜かない。淡々と一心不乱に打ち込むその姿。人の手によって、ものづくりがなされていること。そのものづくりをなす職人さんの心構えと姿勢に激しく心を打たれた。本当にまぶしく見えた。純粋にかっこよかった。刺激をもらった。その時自分が得たこの感情を、多くの人に伝えたいと思うようになった。

 デニムに限らず、ものづくりの現場といえば、若者にとってまだまだ閉ざされたイメージ。日常とはどこか遠い存在。実際、当時の僕にとってもそうだった。でもそこには、かっこよくて、刺激的で、秘めた熱意を持つ人たちがいる。僕が感動したように、たくさんの人が同じように感動してくれるはずだ。そしてそれを伝えることが、誰かの価値になるんじゃないか。社会の役に立つんじゃないか。ようやく真剣に打ち込めるものを見つけられた気がする。

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 みんなにとってのデニム。「EVERY DENIM(エブリデニム)」という名前を掲げ、2014年、当時21歳と19歳の僕ら兄弟は岡山の工場を取材して回り始める。工場の職人さんや経営者の方にインタビューし、ものづくりや仕事の想いについて語ってもらう。それを文章にし、webで発信するという活動だ。ありがたいことに、ほとんどの方々が快く取材を引き受けてくださった。地元でもない(僕らの出身は兵庫県)、同業でもない、いわばただの大学生にたくさんの時間を割き、これまでのことやこれからのこと、明るい話だけでなく暗い話まで、たくさんのことを教えてくださった。協力してくださった方々には今も感謝の思いで頭が上がらない。取材を続けるうちに、色んなことを知り、色んな感情を得た。

 例えば、デニムを含むアパレル産業の構造。僕らがまさに話を聞いている生産工場は“下請け”に位置していて、ものづくりの現場ではあるが好況不況の影響を一番受けやすい。国内での生産比率自体がどんどん低下していて、いまは3%。頑張ってはいるけれど、今までと同じことをしてちゃ、いつか、そう遠くない未来に必ずなくなってしまう。そんなことも取材して初めて知った。

 もう一つは、生産の現場を見ることで、モノにめちゃくちゃ愛着が沸くということ。誰がどんな想いでどんな風に作ったのか。それを知るだけでとても大切に思えるという感情を初めて得たのだ。岡山県内の工場やメーカーをあらかた取材し終わったときには、いてもたってもいられなくなった。

 自分たちが知ったこと、得た感情。これを情報発信という形だけでなくて、もっと工場の方にも社会にも利益として還元できる形で行っていきたい。 「よそ者」「わか者」「ばか者」だった僕らに対して心を開き、熱い想いをぶつけてくれたみなさんに対して、もっと力になりたい。恩返ししたい。そう思うようになった。

 何ができるか色々考えた。そして決めたのが「ブランド」としてのスタートだった。EVERY DENIMとして、ものづくりの当事者である生産工場の方々と話し合い、納得のいく製品を企画し、込めた想いとともに販売する。売り上げが立てばその分、工場の方々へ利益を生むことができる。ワクワクして2015年9月、意気揚々とブランドを立ち上げたのだった。

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EVERY DENIMが大切にしている「3つの指針」

 立ち上げから2年以上経った今も、おかげさまでEVERY DENIMはこうしてやってこられている。まだまだ兄弟2人だけの小さなブランドだが、ここまで企画した4型のパンツは、どれも渾身の想いを込めて販売を行ってきた。

 デニムを届ける上で、大切にしている考え方が3つある。そのどれもが僕らブランドの行動を決定する上で大切な指針となっている。

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①「正しさより楽しさを大事にする」ということ

 「エシカル・ファッション」という言葉がある。直訳すると、“倫理的な”ファッション。ファッション産業において、製造や流通、販売の過程で自然環境や労働環境に配慮しましょうというメッセージを持つ。デニムを販売し始めてから、エシカル・ファッションに関わっていたり、熱心に学んでいる人たちにたくさん会ってきた。

 僕自身、とても好きで大切だと思う考え方だ。ただあくまでも自分の納得する解釈において、この言葉と付き合っていたいなと思う。何においても正しさを求めることはもちろん大事だ。そのために事実を明らかにしたり、論理を組み立てるのも大切なことだと思う。

 でも一方で、そういった考え方自体が、自分を傷つけてしまう可能性も忘れてはいけない。

 ファッション産業は汚いと言われている。確かにそうだ。生産過程では水をめちゃくちゃ使うし、作られた服のうちほとんどは消費者の手に渡らないまま捨てられる。

 知識を得れば得るほど、自分が知らず知らずの間に、環境破壊に加担していたことに気づく。心を痛めた先にあるのは「もう、何も買えない」。僕はこんな風に、物事に真剣に向き合い、色々と考えた人が自分の考えで自分を傷つけてしまうことを、本当に悲しいと思う。だってファッションは本来楽しいもので、モノを買うことも楽しいことなはずなのに。正しさを中心に置きすぎると、すぐに人間なんていらないとなってしまう。だから大事なのは、何よりも「自分が楽しくあれること」だと思う。環境という大きすぎる問題に対しては、まず自分を大事にすること、見失わないこと。

 少なくとも、僕がこれまで会ってきた服の生産者さんは、仕事に誇りを持って、いきいきと語ってくれる人たちだった。みんな楽しそうに自分たちのものづくりのやりがいを語ってくれた。その想いを一心に受け止めたからこそ、僕らも、正しさをウリにするんじゃなくて(それは大前提なんだ)、楽しくお客さんに届けたいと思っている。

 「正しいことを言っているから」選んでもらえるんじゃなくて「楽しそうにしているから」選んでもらえる。僕はそれで良いと思う。そもそも正しさをウリにするということは、正しさという基準をお客さんの側に持ち込むということ。

 「どうやって選べば良いかわからない時は“正しさ”で選べばいいんですよ」とお客さんに言っているようなものだ。

 売り手側は「自分たちがどのような理由で選んで欲しいのか」主張していることに、お客さんに対してその判断軸を持たせていることに対して自覚的になるべきだと思う。正しさは、僕らの存在に対して信頼してもらうことで成り立つべきで、自分からウリにすべきではない。信頼は実績の積み重ねにおいてのみ生まれるもので、一朝一夕で得られるもんじゃない。ブランドは、どのように選ばれたいかを自分で主張できるという、恵まれた立ち位置にいると思う。どんな感情で、お客さんの心を動かしたいか。僕たちはいつまでも、正しさでなく楽しさでありたいと思っている。

 そして、作る人ー届ける人ー使う人、みんなが自分のやり方に誇りを持って、胸を張っていきいきといられるのなら、きっと環境に対しても良い影響を与えられると僕は心の底から信じている。

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②「いつも生産者とともにあるのを忘れない」ということ

 僕らEVERY DENIMは2年間、つねに岡山のデニム工場の人たちとともに、密に対話し、ものづくりの色んなことを教えてもらいながら歩みを進めてきた。これまで生産工場というのは、いわばブラックボックスだった。一般消費者からすれば全く情報を得られない場所で、目にするのは、いつもお店で売られている完成品ばかり。

 メディアで取り上げられることがないどころか、メーカー・ブランド側からはむしろその存在を隠される。そんな扱いだった。ただもうそんな時代も変わってきていて、僕自身もそうだし、Biの読者の方にもたくさんいると思うけれど、モノの生産背景に関心のある人の数はぐっと高まっている。

 ただ、当の現場が、まだまだその需要についていけていない。工場はまだまだモノを作る場所で、一般人が立ち入る場所ではない、という共通認識はデニム産地でも根強い。仕方ない、だってずっとそうだったんだから。

 2017年の3月、友人の鎌田 安里紗(かまだ ありさ)さんと共に、2泊3日で岡山のデニム工場をめぐるツアーを開催した。参加者のみなさんと「心を満たす生産と消費のあり方を考える」観光にとどまらないヘビーなツアーだ。

 先述の通り、受け入れ側の生産工場にとって「人がくる」ということに、直接的なメリットはない。そんな中ツアーで回った工場は、どこも快く案内してくれ、社を挙げて協力してくれた。

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デニムの洗い・加工場のニッセンファクトリー(株)

 普段は人前に出ない職人さんと、参加者が話す時間を設けてくださったり、工場の使われていなかったスペースを改装してギャラリーにしてくれたり、参加者が工場の見るべきポイントをわかりやすくするためにインスタスポット!を設けてくれたり、そのようにして、オープンな心構えをもって対応してくださったのが、僕らは何より嬉しかったし、その想いはツアー参加者のみんなにも十分伝わっていたと思う。

 ありがたいことに、僕はこうして、発信の側に回らせてもらえている。そういう意味で、工場にとって僕は既存の取引先(ブランド)と何ら変わらない立ち位置だ。

 僕自身、裏方に徹したいなんて全く思わないし、自分がもっともっと前に出て色んなチャンスを掴みとりたいと思っている。ただ、その前進を支えてくれているデニム工場の人たちの存在を隠したいとも全く思わない。

 とにかくスポットライトは関わるみんなに当たってほしい。

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③「美しく成長する」ということ

 EVERY DENIMはこれまで、クラウドファンディングに2回挑戦している。1度目が立ち上げの2015年9月。2度目が2017年6月。どちらも多くの方の支援を頂いて本当に感謝している。

 立ち上げ時の資金として、いろんな方から支援金を頂いたという事実は、僕らをここまで進めてくれた原動力になったと振り返って今思っている。

 「みんなから支援していただいたお金を元にやっている」という気持ちが、自分自身にとても強くポジティブに作用してきた。

 絶対無駄にはできない。大切にしないといけない。と心の底から思えるのは、みんなが僕らに期待してくれた思いを感じる資金だったからに他ならない。このお金は、僕をとても熱い気持ちにさせてくれる、いわば“熱いお金”であったのだ。そんな熱いお金をやりくりし、ここまでたくさんのお客さんが僕らのことを支援してくださったおかげで、こうしてデニムの販売をして生きてこられた。

 店舗もなくイベントのみの出店という、買い手からすれば不便な手段にも関わらず、毎回温かい方々に迎え入れられて販売活動ができている。

 今のところEVERY DENIMは、この対面販売が性に合っていると思っている。最も自分たちの想いをストレートに伝えやすいし、工場へも最大限利益を還元できるからだ。

 これからこのスタイルをもって、キャンピングカーで全国を回る旅に出る。1人でも多くの人にデニムを届けるため、仲間と一緒に、楽しく声を上げたい。そして旅が終わる頃には、また一回り成長していたい。応援してくれるみんなに向けて、結果を出し、大きくなった姿を見せたい。あなたたちが見守ってくれているEVERY DENIMは、こんなにもたくさんの人にデニムを届けられるようになりましたよ、と。

 成長の過程が美しくなければ、どうして応援され続けるだろう。醜い手段を選んだ時、僕らの活動はそこで終わる。

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僕らの旅の終わりかた

 適当に作られたモノなんて、適当に使われるに決まってる。
 適当に使われるモノなんて、適当に作られるに決まってる。

 どちらも悪くない。安定した仕組みの中で、適当なものづくりと適当な消費は、ある種、需給を満たし合っている。僕らはそれには乗っからない。自分たちの手で、豊かな生産・使用・消費のサイクルを生み出す。そこに適当さはない。適当さを生み出したとしたら、それは僕たちの責任だ。

 生み出した循環は、決してマスに取って代わることはないだろう。それで良いと思う。僕らは何かを打倒したいんじゃない。ただ身の回りの、大切な大切な大切な生産者と消費者を豊かにしたいだけ。僕らの周りには、こんなに素敵な作り手と使い手が溢れてる。まずそのことに全力で胸を張りたい。

 人間は距離の近い人のことしか大切に思えない。いきなり地球の裏側の人に想いを馳せることは難しい。極端に言えば僕も身近な人しか大事にできない。ただ、今の時代は素晴らしい。僕が身近な人を大切に思うこの“気持ち”自体をシェアすることができるから。みんなが隣の人を大事にする想いを共有し合えば、地球全体としてはハッピーだ。そんな風に考えて生きている。

 僕はモノを作る方にとっても、使う方にとっても、もっと期待値を上げたい。そのためにできることは、想いを持って発信し続けること。

 心を満たす生産のあり方。心を満たす消費のあり方。その両方を見つけることができたとき、初めて僕らの旅は、終わる。

Yohei Yamawaki

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1992年生まれ。大学在学中の2014年、実の弟とともに「EVERY DENIM」を立ち上げ。オリジナルデニムの販売やスタディツアーを中心に、生産者と消費者がともに幸せになる持続可能なものづくりの在り方を模索している。繊維産地の課題解決に特化した人材育成学校「産地の学校」運営。2018年2月より「Be inspired!」で連載開始。

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EVERY DENIM

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EVERY DENIMとは2015年現役大学生兄弟が立ち上げたデニムブランド。
なによりも職人さんを大切にし、瀬戸内の工場に眠る技術力を引き出しながらものづくりを行う。
店舗を持たずに全国各地に自ら足を運び、ゲストハウスやコミュニティスペースを中心にデニムを販売している。

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All photos by Jun Hirayama
Text by Yohei Yamawaki
ーBe inspired!

 

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